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淡路島の雨堤さん

淡路島を通るとき、なにを置いてもお会いしたいと思っていた人物。それが、雨堤徹さんだ。

もともとは三洋電機の電池開発をリードしてきたキーパーソン。2010年に退社して、郷里の淡路島で『Amaz技術コンサルティング合同会社』を設立。その代表者として、電池の技術開発や活用システムの開発に取り組んでいる人だ。

実は。

日本EVクラブ、そして舘内さんは、二つのギネス世界記録を保持している。

2009年に東京ー大阪間555.6kmを途中無充電で走破

2010年には、筑波サーキット内のオーバルコースで、電気自動車による一充電航続距離(途中無充電)の世界新記録1003.184kmを達成した。

このときの手作りEVに使用していたのが、三洋電機の18650という電池。テスラのモデルSが搭載しているのと同じタイプの高性能なリチウムイオン電池だ。

日本EVクラブのギネス記録は、ともに、雨堤さんが三洋電機の電池技術者として協力してくださったからこそ達成できたといえる。

なので。

かねてからEVクラブとは関わりの深い方なのだが、私自身はまだお会いしたことがなかった。

この旅で、EVスーパーセブンで、雨堤さんのラボをお訪ねしたい、と思っていた、というわけだ。

 

研究所の駐車場には、雨堤さんが並行輸入して、自力で車検を取得したテスラモデルSが誇らしげに停まっていた。

すでに日本発売は決まっているがデリバリーはまだ始まっていない。

おそらく、今の時点で公道を走っているモデルSは、テスラジャパンの試乗車などを含めて数台だけ。

雨堤さんも、車検通過にはかなり苦労を重ねたらしい。

たとえば。

テールのウインカーの色が輸入したままでは赤いランプで、それでは車検に通らない。自分で一体型のパーツを取り外して切り取って、使っているLEDの色を変えたという。

さすが、日本が世界に誇るエンジニア。手先は器用でいらっしゃる。

って、そこはあまり重要なことではない。

 

これから、EVが普及するかどうかは、さらに安価で、より高性能な電池を開発できるかどうかにかかっているといっていい。また、EV用の大容量で大型の電池開発は、自然エネルギーを有効に活用するために不可欠な定置型の蓄電池の進化にも貢献するはず。

雨堤さんは、大手メーカーでの電池開発経験をいかし、さまざまな企業の電池開発、電池利用システム開発のコンサルティングを手がけている。

いわば。

電池の、世界最前線にいる人なのだ。

はたして、EVの電池は、近い将来、誰でもEVを安心して買えるほどに安くなるのか。

端的に伺ってみた。

いわく。

自動車メーカーの電池開発は進んでいて、すでに定置用の大型蓄電池に比べると、とても安い値段で発売されている。たとえば、日産リーフは24kWhの電池を搭載しているが、補助金を使えば200万円台で購入できる。

つまり、1kWhあたり10万円程度。自動車であるためのほかのパーツや、販促費などを含めて考えると、すでに電池価格は10万円の1/3〜1/4程度の値段で調達できていると考えられる。

今はまだ「航続距離が足りない」などといわれるが、より大容量の電池を搭載することで、来年には一充電の航続距離が300kmを越える国産EVが登場してくるだろう。

とはいえ。

日本の自動車メーカーは、HV用の電池技術に引っ張られ、電池の「エネルギー密度」よりも
「パワー密度」にこだわっている印象がある。大容量の電池を搭載すれば、一気に力を発揮するための「パワー密度」はあまり重要ではなく、より航続距離を伸ばすための「エネルギー密度」が大切になる。

基本的にはPC用でエネルギー密度の高い18650を使って、500kmの航続距離を達成したモデルSを見習うべきだ。

ところが。

定置型電池開発も含めて、日本には、部分的な技術開発やその使い方を構築するプロフェッショナルはいても、そうしたソリューションをトータルで考える人材がいなかった。

だから。

Amaz技術コンサルティングが、その役割を果たしていきたい、と。

 

 

えっと。

EVや電池に興味のない人には、読む気のしないであろう長文を書いてしまった。

ま、即日ブログだし。

私の取材メモ、と考えていただいて。ご参考までに。

とにかく。

「エネルギー密度とパワー密度」が象徴する方向転換やチャレンジの鈍重さ。

さらには、「トータルで考える人の欠如」は、EV問題だけでなく、今の日本が抱える大きな弱点ではないか、とも思う。

 

「ただ、モデルSは先日、アメリカの事故で燃えましたよねぇ」とつぶやいた私の言葉を、「ガソリンエンジンのクルマは、もっとぼこぼこ燃えてきたでしょ」と即答してくださった雨堤さん。

想像したとおりの、痛快な方でした。

 


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