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【舘内レポート】ドライバー紹介、その2。

10月24日(木)。

9月24日にスタートしたこの旅も、今日で1カ月になる。ただ一人、1日も休まず旅を続けている寄本さんは、もう旅を続けなければ生きていられない生物になってしまった。本日は、この旅のファースト・ドライバーである寄本好則さんのご紹介だ。

寄本さんの旅の一日は、安いビジネスホテルの硬いベッドで午前4時に目を覚ますことから始まる。朝食までに旅のブログを書くのだ。やがておかずの少ない朝食を壁を見つめながら食べて、EVスーパーセブンの幌をしまい、ジャンパーを着て、グローブをはめ、風に吹かれてアクセルを踏み、行ったことのない地方の小さな、ときに寂しい町を旅するのである。

寄本さんは、高尚にいえば旅を友とした松尾芭蕉である。やがて「旅に病み、夢はEVスーパーセブンをかけめぐる」なる迷句を残すことになる。あるいは西行といってもいい。寄本さんは伊勢神宮を参拝した際に、「何事のおわしますをば知らねども かたじけなさに涙こぼるる」と詠んでいるではないか。えっ、それは西行の歌だってか。

生物でたとえれば、えら呼吸ができず、泳ぎ続けなければ呼吸できず生きられないサメである。50歳も超えてサメにたとえられる人生を送ることになるとは……。

だが、1日でもEVスーパーセブンに乗ってこの旅をしてみると、この旅の不思議な魅力たちまち惹きつけられてしまう。旅そのものがもつ霊的な力に、EVスーパーセブンの尽きないドライブの楽しさが加わると、とてつもない吸引力となるのだ。ああ、私も毎日、EVスーパーセブンと共にいたい。ということで、10月31日に屋久島に行き、再び旅人になる。

私は、92年に東京日本橋からスズカサーキットまでの470kmを、日本EVクラブ副代表の御堀直嗣氏と歩いた。10月8日に出発して2週間後の22日に着いた。毎日、少ない日でも30km、多い日には45kmも歩くけっこうきつい行脚であっが、実に清清とした、気持ちの良い、楽しい旅であった。

東京に戻った私は、心身ともに浄化されて、霊的なパワーを身に着けていた。そのパワーがやがて日本EVクラブを設立させる原動力になったのだった。いまでも霊的なパワーは衰えず、この旅をぐんぐんひっぱっている。えっ、ほんとうかってか? ほんとうである。

それからすると、寄本さんも旅を終えると霊的なパワーが備わるに違いない。電気の力=エレクトリック・パワーである。子供の頃からめざしてきた直木賞も目の前だ。あるいは、私の推測どおり、ロスト・EVスーパーセブン症候群に罹って、夢はEVスーパーセブンをかけめぐっているかもしれないが。

今日は寒かった。EVクラブ事務局では、しまっておいた七輪に炭を起こして餅を焼きながら暖を取っている。もちろん冗談だが、室内でも上着を着ないと寒い。考えてみればもうすぐ11月。寒いのが当たり前である。幌をかぶっても風が巻き込むEVスーパーセブンは、さぞ寒かろうと心配だ。

そうなのだ。EVスーパーセブンには冷房も暖房もないのだ。原野と共に走るクルマなのである。台風が無事に過ぎ去って、四万十川めぐりが晴天で温かいことを祈ろう。
 
(舘内 端)
 


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