ノリからカイに

2021年に購入したHonda e

加藤 盛一(栃木県)

エンジンのかからなくなったN360をレストアしようか悩んでいた2008年にEVクラブと出会い、「EV」という響きに新しさと面白さを感じてEV化を決断。2012年に車検を取得し、4年ほど通勤に使用していました。2016年からはブレーキの不調により継続車検を取らず、EVのない生活を送っていました。その間、縁あって市販EVの開発に関わり、その後2021年にEVを購入、昨年5年ぶりにEVオーナーに戻りました。

購入したのはホンダの「Honda e」。街なかベストの小さくてかわいい電気自動車です。主に妻が買い物や子供の送迎に使い、遠出や大きい荷物を運ぶときはもう一台所有しているミニバン(ガソリン車)を使っています。コンバートEVを持っていた経験から、EVの乗り心地や加速の良さと、航続距離が短くても普段使いには困らないことがわかっていました。

また、自宅の太陽光発電が設置後10年を経過し、発電した電気の売電価格が下がってしまうことや、先の大震災で長期的な停電を経験したこともあり、太陽光発電の電気をEVに貯めることで、電気の有効活用と災害時への備えができないかと考えていました。そこで、補助金を利用してV2H(Vehicle to Home)を設置し、電気の地産地消への取り組みも始めました。ただ、昨年の実績では、自宅の太陽光発電でまかなえるのは自宅の電気消費量の50%くらいで、地産地消には程遠かったです。

そこで、昨年末からFIT制度を利用した太陽光発電所への投資を始めました。再生エネルギーの発電に貢献することで、せめて自宅で消費した電力分は再エネでカーボンオフセットさせたいと考えたからです。このおかげで、数字上は再エネの発電量が自宅の消費量を超えることができました。しかし、遠くの発電所で発電された電気は、直接自宅で使うことができません。将来的には、自分が作っている再エネを自分で消費できる生活になればうれしいと思っています。そのためにはVPP(Virtual Power Plant)のようなシステムによって、電力の需給を個人単位で制御することが必要だと考えています。エネルギーへの関わり方は、過去は「官」から「民」にシフトし、現在は「個」に移行しているフェーズだととらえています。

VPPの中ではEVも重要な要素です。蓄電池としてバッファの役目をするのはもちろんですが、例えばEVに貯めた自家発電の電気を個人売買できるようにして、個人が少しでも利益を得られる仕組みがあれば、経済的な観点でも再エネやEVへの関心と参入者が増えてくるのではないでしょうか?

日本や世界を見渡すと、化石燃料や原子力に頼らざるを得ない発電の事情や、電池の材料の問題などが山積し、まだすべての自動車がEVになり再エネだけで走る、というのは現実的ではないのかもしれません。ただ、自宅や市町村レベルの地域単位での、エネルギーの地産地消なら実現可能ではないかと思ってきました。その規模感で一番活躍できるのは、もしかすると、「市民団体」なのかもしれません。

話は変わりますが、私の祖母は5年前に免許を返納し、今はシニアカー(時速6km/h以下の歩行者扱いの乗り物)(=マイクロEV)に乗っています。免許を返納した当時は、家族の送迎がなければ買い物や通院・趣味のグランドゴルフに行けなかったのですが、シニアカーを使うようになって自由な移動の喜びを噛みしめているようです。祖母の住む地域は高齢化と過疎化が進んでおり、ご近所にも免許を返納した方がいらっしゃいますが、まだシニアカーの認知度は低いようで、なかなかツーリング仲間ができません(笑)。理由は、高齢者がひとりで出かけることに対する家族の不安が大きい、という印象です。個人的には、高齢者こそ移動の自由を得ることでイキイキ活動し、健康寿命の増加につなげることが大切ではないかと思っているのですが。

また、このようなマイクロEVが増えてVPPにも繋げることができるようになれば、より電力のバッファとしてEVを役立てることができるのではないかと思います。もしかしたら世界のエネルギー問題を解決するのは、過疎地域の高齢者かもしれません。翻って、過疎地域はビジネスメリットが見えにくいため、企業が参入しにくいのかもしれません。やはりここでも活躍できるのは「市民団体」なのでしょうか。

2008年のEV製作開始から14年がたち、このレポートをここまで書いて「当時からだいぶ考え方が変わったなー」と可笑しくなりました。当時は、「EVって新しい・おもしろそう」という「ノリ」で、レストア感覚でEVコンバートを始めました。気づいたら「EVは過疎地域から世界を救うVPPのグリッドだ」と言っていました。これはきっと進化なのだと思います(笑)。10年後にもまた違った進化をしていられるように、何か新しいことを「隗」より始めたいと思っています。

2012年にコンバートしたNコロEV

世界を救うモンパル

●『日本EVクラブ会報 2021』 トップページに戻る