洞爺湖キャラバンDailyレポート 舘内 端

プロフィール

舘内 端

私たちの生活の中で十分に使えるEV。そのことを多くの人たちに知っていただきたい。
EVはきっと、世界の人々を地球温暖化防止活動に結びつける架け橋になれる。私はそう信じています。

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2008年06月27日 21:05

EVってすごい。

 すでにレポートされているかもしれませんが、東京~洞爺湖のデータを振り返ってみます。


 ・全走行距離は858.7km
 ・消費電力は85.65kWh
 ・CO2排出量は35.12kg
 ・充電の電気代1,713円


 

でした。


 

 一方、これをリッター11.4kmの燃費の軽自動車(軽自動車の平均燃費 神奈川県調べ)で走りますと、


 ・消費ガソリンは75.3リットル
 ・CO2排出量は174.6kg
 ・ガソリン代は12,956円(リッター172円として)


 となります。


 まずCO2排出量を比較すると、EVは同サイズのガソリン車の約5分の1となります。つぎに燃料代を比べると、EVは7.5分の1になります。

 

CO2削減のすごさ
 さて、さらに突っ込んだ考察をしてみましょう。まず、CO2排出量についてです。現在、EUではメーカーごとのCO2排出量を130g/kmにしようとしています。燃費の悪い大きなクルマをたくさん販売するメーカーは、燃費の良い小さなクルマをたくさん販売しないと、平均CO2排出量がぐっと多くなってしまいます。では、EVはどうでしょうか。
 今回の旅には、i MiEVとR1eの2台のEVを走らせました。上記の値は、この2台の平均値です。858.7km走って35.12kgのCO2排出量ということは、約41gCO2/kmということです。EUが今後に予定する120g/km、さらに90g/kmというCO2排出量規制も優に超えています。EVは、非常にCO2排出量の少ない自動車だといえます。
 ちなみに、130gCO2/kmをガソリン車の燃費に換算しますと、リッター17.8kmとなります。120g/kmはリッター19.3km、90g/kmはリッター25.8kmです。
 つぎに、85.65kWhという電力消費量ですが、ちなみに日本EVクラブと私の事務所の合算の電気消費量(08年5月分 50A契約)は、361kWhでした。東京から洞爺湖までのEVの電気代(1台分)は、この4.2分の1ということになります。ほぼ毎日働いていますので、361kWhの1日分は12kWhになります。したがって、洞爺湖までの電気代は1週間分の電気代ということになります。
 ということで、燃料代を比較しますと、EVのそれはガソリン車の7.6分の1になります。超安いといってよいでしょう。しかし、これはほんの序の口で、EVはもっとすごいのです。

 

深夜電力というすごさ
 上記のCO2排出量や電気代は、各地の電力会社の電力料金の平均値と昼間電力の場合を想定したものです。たとえば、深夜電力で充電したことを考えましょう。この旅の充電の3分の1から半分は、深夜に充電したということもありますし。
 たとえば東京電力の01年度CO2排出原単位実績では、昼間は0.318kgCO2/kWhでした。これは、1kWhの電気を消費すると0.318kgのCO2が排出されるということです。1kWhの電力というのは、1000Wのヘアードライヤーを1時間使ったときのものです。あるいは、800Wの電気コタツを1時間15分使った場合と同じです。
 中部電力のデータによると、原子力発電は0.022kgCO2/kWhです。この値を使うと、85.65kWhという今回の旅の消費電力を原子力発電の電気で充電した場合、CO2排出量はたった1.9kgになります。ちなみに深夜電力のほとんどは原子力発電です。ただし、実際には上記ほどCO2排出量は少なくはないようです。

 

CO2ゼロ充電というすごさ
 原子力発電は核廃棄物の処理に問題があるというのであれば、太陽光発電で充電しましょう。この場合、CO2排出量は0.053kg/kWhです。あるいは風力であると0.029kg/kWh、地熱は0.015kg/kWhです。
 屋久島の電力は水力中心ですが、この場合は0.011kg/kWhです。水力発電の電気で充電すると、東京~洞爺湖のCO2排出量は0.9kgとなります。ほぼゼロCO2ということができるでしょう。
 EVは、走る時に排ガスとCO2排出量を出さないばかりか、充電時のCO2排出量も大変に少なくできる可能性をもった自動車だということです。

 

燃料代が安いすごさ
 つぎは、燃料代です。深夜電力の場合、昼間電力のおよそ7割引の電気代ですから、1,713円の電気代はたった500円ほどになります。東京から洞爺湖まで858.7kmをたった500円ほどで行けるということです。とんでもなく安いと思いませんか。ただし、フェリー代は別ですが。

 

エコドライブでさらにお得にというすごさ
 しかし、誰が運転してもこのような燃料代、あるいはCO2排出量になるとは限りません。今回の旅のドライバーは、エコドライブの超スペシャリストです。彼らだから可能だったという面も大いにあります。これは航続距離を見ると、もっとはっきりするでしょう。
 三菱自動車工業のiMievの1充電航続距離は、実質的には100kmほどです。ところが、エコドライブをするともっとたくさんの距離を走れることが分かりました。R1eも同じです。
 5日目の岩手県庁から東日本三菱自動車にしね店までで、国沢光宏さんは13.68km/kWhという電費を出しました。これは、1kWhの電力で13.68kmを走ったということです。i MiEVの公称電費は10km/kWhですから、およそ37%も電費が良かったことになります。この電費でずっと走れたとすると、i MiEVは1回の充電で210kmほど走れることになります。しかし、実質的な航続距離は100kmほどなので、実際には137kmということになるでしょう。


 初日、石井昌道さんはTEPCOさいたま支社から高岳製作所までの65kmで、14.3km/kWhという超優良電費を出しました。R1eに搭載されている電池の電力は9kWhですから、この電費ですと130kmほど走れることになります。公称航続距離は80kmですから、1.6倍も走れることになります。
 悔しいので、私のエコドライブ記録も記しておきます。92年に10モードが21kmのエコシビックで、実際に100km走って、リッター54.8kmという記録を出しました。ちなみにCO2排出量は42g/kmです。場所は北海道、記録人は今回の旅で活躍した斎藤慎輔さんです。ただし、平均時速は38km、耐えに耐えた走行でした。それに比べると、同じエコドライブでもEVの場合は、ずっと楽です。


 ということで、EVのすごさを列記してみました。2001年日本1周充電の旅でEVのすごさは分かっているのですが、改めてそのすごさに驚きました。

 

本当のすごさは・・・
 しかし、EVの本当のすごさは、乗る人のライフスタイルを変えてしまうことです。日本EVクラブの会員で自作のEVに乗る人たちは、まず充電する電気に関心が向きます。できればCO2排出量ゼロの電気で充電したいと思うようになるのです。
 やがてソーラーパネルを自宅の屋根に取り付け、庭の広いお宅では小型の風力発電機を設置し、ついに電力会社からの電灯線をはずし、断熱性に優れた家に改造し、雨水の循環システムやコンポストトイレを設置し、とさまざまなエコライフに挑戦を始めます。
 その結果はさまざまですが、中にはEVから自転車に転向したり、自転車もやめて徒歩にしたりと、超エコ移動方法に変えてしまう会員もいます。
 これは、EVの静かさやクリーンさが、人に改めて自然との共生を考えさせるからに他なりません。EVが増えると、その国全体でエコライフが推進されることになるのではないでしょうか。
 さて、試乗してEVから降りてきた人たちは、一様にニコニコしています。もしかすると、本当のEVのすごさは人を笑顔にさせてしまうことかもしれません。そして、その笑顔は本人とスタッフの素晴らしい勇気となります。EVのすごさの真実は、人に未来に生きる勇気を与えることかも知れません。
 EVが普及することは、地球温暖化を抑制し、石油需給の緊張をほぐします。それだけでも素晴らしいと思うのですが、EVが人々に未来を切り拓く勇気と希望と夢を与えられるとすれば、もっと素晴らしいと思います。
 単にEVが売れるだけの普及ではなく、私たちがもっと強くなれ、未来に生きる力が湧いてくるような、そんなかたちの普及であってほしいと思います。

 

 あっというまのEVの旅でした。G8で良い議論が行われることを願って、この欄も終わりにしたいと思います。お読みいただいた方がに御礼申し上げます。みなさんに幸せな明日がやって来ますように。