洞爺湖キャラバンDailyレポート 舘内 端

プロフィール

舘内 端

私たちの生活の中で十分に使えるEV。そのことを多くの人たちに知っていただきたい。
EVはきっと、世界の人々を地球温暖化防止活動に結びつける架け橋になれる。私はそう信じています。

記事一覧

2008年06月24日 18:14

バッファローダンスはいかがですか

今日は24日です。私は岩手県庁で達増拓也知事にお会いしてからキャラバン隊を見送って、一人はなまき空港から千歳に飛びました。今は、千歳で今日から加わるスタッフの出迎えなのです。その合間にこれを書いています。


木野レポートを見ますと、今日も無事に2台のEVは走っています。走らないといわれそうなEVの航続距離ですが、しかし、もう600km以上も走ってしまったのです。たとえエンジン車でも、とても1日では走れそうもない距離です。


そういえば、2001年充電の旅では、12000kmもEVで走って日本を1周したのでした。今回のような東京電力の急速充電器などという便利なインフラもなく、たとえあっても鉛電池でしたから使えず、1日の走行距離はわずか80kmから100kmでした。しかし、それでも結果として12000kmも走れたのです。なぜでしょうか。それは、EVに合わせて走ったからです。


一方、私たちは、いつの間にか、なんでも自分に合わせようとするようになってしまいました。合わないものはクレームまでつけて合わせようとします。それが当たり前であり、メーカーはどんな人にでも合う商品を作ろうとしています。自動車もその延長上で考えようとします。つまり、EVの航続距離も自分に合わせろというわけです。万人が満足できる航続距離を探しているといってもよいでしょう。しかし、人はみな違うのです。ですから、一人一人の要望に沿った航続距離を設定できなければ、決して許されないのです。本当にそうでしょうか?


さて、このような考え方を自然にまで及ぼすと、どうなるでしょうか。自然も自分に都合よく変えてしまえというわけです。その答えは地球温暖化であり、資源の枯渇であり、自然環境の破壊であり、食料危機です。


一方、日本を含めてアジアの人たちは、自然と共に生きることを信条としてきました。あるいは自然と共生しないと生きられないことを知っていたといってもよいでしょう。けっして自然を自分の都合の良いように変えようとはしませんでした。そこから生まれたのが自然崇拝だったのか、自然を神と崇めたからそうなったのか知りませんが、とにかくそうなのです。


その自然崇拝はやたらのものではありません。ものすごくスケールが大きいのです。たとえば、私たちは「生きとし生けるもの」という言い方をします。生きている生物はみなあい等しい命を持っているから大切にしようというわけです。命に貴賎も上下もありません。これは、すばらしい知恵です。しかし、仏教ではさらに、命を石や川にまで見ます。「山川草木悉皆成仏」といって、生きているものに限らず、山でも川でもあらゆる存在に命が宿り、それらは等しく最高の知恵を身につけることができ悟りを開ける(成仏する)というのです。それは、地球上にとどまりません。宇宙のあらゆる存在が等しく命を持っているというのです。ものすごくスケールが大きいですね。


自然崇拝は、アジアにとどまりません。古代のヨーロッパにも存在しましたし、アメリカン・ネイティブの人たち、インディアンも同じ宗教を持っています。もっとも、インディアンは、私たち日本人と同じモンゴロイドですから、信条も近いのかもしれません。彼らには、「イディアンダンス」という踊りがあります。神話といってもよいかもしれません。


詳しくは、ネット等でお調べいただきたいのですが、インディアンの娘とバッファローの神話です。この娘はバッファローのお嫁さんになります。しかし、お父さんが恋しくなってしまいます。お父さんも娘に合いたくてバッファローの谷にやってきますが、バッファローに殺されてしまうのです。嘆き悲しんだ娘は、夫のバッファローにお父さんを蘇らせてほしいと懇願します。


それを聞いたバッファローは、これから私たちを殺して、肉や皮を奪ったら、必ずバッファローダンスを踊ってくれ。踊ってくれたら、私たちバッファローも蘇ってお
前たちにまた殺されてやろうというのです。バッファローダンスを踊ることを約束してくれれば、お父さんを蘇らせてやろうといって、本当に蘇らせたのです。


この神話は、インディアンたちが、自分たちが必要以上にバッファローを殺さないためのものです。バッファローを殺しすぎれば、確かに肉や皮はたくさん手に入りますが、翌年、バッファローは少ししか現れてはくれません。それでは、自分たちは生きていけません。つまり、バッファローと共生するための神話なのです。


そのEVに合わせて乗る。航続距離に合わせて使う。そのためには工夫が必要です。そのためにはEVに慣れる必要があります。EVと生活したこともないのに、航続距離をどうすれば良いか。分かろうはずもありません。ですから、まずは現行のEVを使ってみて、それから考えてみるというのは、いかがでしょう。


さて、モノとの関係ばかり書いてきましたが、対象が人間でも同じです。私に合わせろもいいですが、相手に合わせる工夫って大事ですよね。隣人と仲良く生活するには、ときに相手に合わせることも必要です。あの人は(私に)何もしてくれない。お母さんは私に何もしてくれない。お父さんは私を愛してくれない。事実、そうかもしれないのが怖いですが、その前にあの人にいろいろしてあげることも大事ですし、お父さんやお母さんを愛してあげることも大切です。してくれない症候群の果てに、自然も私のいうことを聞いてくれないでは困ります。自然のいうことをじっと耳を澄まして聞いてみることが、自然との共生の第一歩かもしれません。


EVのささやきをじっと耳を澄まして聞いてみる。そうしてドライブしているのが今回のモータージャーナリストや自動車評論家のみなさんです。ですから、北海道まできっとたどり着けますし、航続距離もメーカー算定値よりも伸びるのです。彼らのEVと共にある姿勢に、じっと耳を澄ましてみませんか。


前回の予告どおり、今回はもっとむずかしかったと思います。明日はさらにむずかしくします。分かりやすく、簡単にも悪くはないのですが、簡単に破壊して、自然を分かりやすいものにしようとしてきた結果が今日の地球だと思いますので、分かりにくく、複雑にいきます。

 

追伸

いま、木野レポーターから無事にフェリーに乗ったとの連絡が入りました。良かった!
フェリーの中では充電はしないそうです。

みなさんの幸せとフェリーの無事な航行をお祈りします。