新型コロナウイルスが猛威を振るっています。いかがお過ごしでしょうか。外出の自粛が要請されていますので、直接お会いできず、寂しい限りです。
そこでEVに関心のある方や、熱烈EVファンの方と、いろいろお話がしたくて、このコーナーを立ち上げました。
電気自動車=EVに関する疑問やご相談を皆さんと一緒に考えていこうと思います。私にわからないことは、EVクラブの会員の方で詳しい人や、専門家にお答えいただきます。
みなさんでこのコーナーを盛り立てていただき、EVが普及して地球温暖化・気候変動が収まると嬉しいです。
よろしくお願いします。

日本EVクラブ 代表理事 舘内 端

『EV相談室』記事一覧
【第1回】日本でEVがあまり普及しない原因は何?
【第2回】未来の車はEVしかない?

【第3回】Q. どのていど(充電)スタンドが配置されると、電気自動車はガソリン車とおきかわりますか?

親子電気レーシングカート組立&EV試乗会に参加された小学生からの質問です。
大人的に言いかえると、「内燃機関自動車からEVに完全にシフトするには、どの程度充電インフラを整える必要があるか」ということだと思います。ウーン。むずかしいですね。とくに小学生にわかるように説明するのは...。

A. (前編)EVとガソリン車はまったく違う乗り物なので・・・

さて、ガソリン車がガソリンスタンドでガソリンを入れないと走れないように、電気自動車もどこかで電池に電気を入れてやらないと走れません。これを「充電」といいます。

また、ガソリン車がタンクにたくさんガソリンを入れると(給油すると)長い距離を走れるように、電気自動車もたくさん電気をいれてやれば、長い距離を走れます。

ところが、ガソリン車の給油する時間は、いわゆる満タンにするにしても数分で済みますが、電気自動車は短時間で電気を満タン=満充電にはできません。満充電にするには急速充電で満充電の80%にするのに20分から30分、100%の満充電にするには普通充電(後述)で6時間から8時間、たくさん電池を積んでいる大きな電気自動車で500kmとかたくさん走った時は、まる1日かかる場合もあります。

電気自動車を充電する場合、
・どのくらい走ったか(前回の充電からの走行距離)
ーーー長いほど充電に時間がかかる
・電池はどのくらい残っているか(電気残量)
ーーーたくさん残っていれば満充電までかかる時間が短い
・充電後に何キロメートル走りたいか (希望走行距離)
ーーー短いほど早く充電が終わる
・充電器の能力はどのくらいか
ーーー充電する電力が大きな充電器ほど充電する時間が短い
といったことを考えなければなりません。
このように電気自動車の充電時間はばらばらですから、どのくらいの充電設備が必要か、なかなか決められません。

ただし、電気自動車の充電は家のコンセントでするのが基本的です。ガソリン車はガソリンスタンドが開いている時間にいかなければ給油できませんが、家で好きな時に充電できるのが電気自動車の大きなメリットです。

自宅以外にカーディーラーや公共施設等には普通充電器あるいは急速充電器が設置されています。充電カードを持っていれば容易に充電できます。カードがなくても充電できる場合もありますが面倒です。

普通充電器は設置費用はあまりかかりませんが、充電時間は自宅での場合と変わりません。
ただし、6kWという大きめの充電器が車体に備わっているEVやPHEVの場合は、普通充電でも自宅充電の半分の時間で可能です。もっともご自宅のブレーカーが50A(アンペア)と大きな場合は充電のために30A流しても家で使う電気はまだ20Aありますから、6kWの充電が可能です。

ご質問の充電施設の普及数ですが、ガソリンスタンドの数を参考にしてみましょう。
現在、全国のガソリンスタンドは2万9000店ほどです。たくさんあるように見えますが、1994年には6万店もあったのです。今は、過疎地では40キロも走らないとガソリンスタンドがないところもあります。

一方、2020年5月で急速充電器は7,678カ所、普通充電器は1万4507基あります。合わせて2万2185カ所です。ガソリンスタンドは、これまで1年間でおよそ1200店減っています。今後も減り続けそうです。それに比べて充電器はまだ増えると考えられます。ガソリンスタンドと充電器の数が逆転するのも近々でしょう。

充電器の数がガソリンスタンドの店数を抜いたからと言って充電がしやすくなるかというと、かなり便利になるとは思いますが、給油が数分で済み次のクルマに給油のノズルを譲れ、しかも一度の給油で400キロも600キロも走れるガソリン車に比べて電気自動車は充電に時間がかかり、500キロも走れる高級電気自動車は別にして、小型の電気自動車の航続距離は200キロから300キロほどです。遠出するには、どこかで20分から30分と充電時間の短い急速充電をしなければなりません。

ところで電気自動車は家で充電するのが本来の使い方ですと書きました。ということは、家のコンセントの数も充電器の数に加えないといけません。国交省の調査では2018年の住宅数はおよそ6000万軒です。この住宅で充電できるとすると、充電器(充電設備)は2万2185カ所に加えること6000万になるのです。6002万2185カ所になります。だから充電器の数は十分で、今すぐに電気自動車におきかわると言えるかというと、そうではありません

ガソリン車と電気自動車は同じような自動車に見えますが、まったく違う移動機関です。ですからガソリン車と同じように電気自動車を使うことはできません。それでもガソリン車と同じに使うとすれば、ガソリン車とは別の走行インフラが必要です。そのひとつが急速充電器で、それをどこに、どれだけ設置すればガソリン車と同じように使えるのか考えなければなりません。

さて、私たちはどのようにして電気自動車を生活に取り入れ、どのように使えばよいのでしょうか。小学生には少しむずかしいと思いますが、私たちの生活の仕方を電気自動車に合わせるという方法があることを、ここでは提案しておきましょう。

たとえば、自宅で充電して走れる範囲で使う。こうした使い方も、そのひとつです。しかし、遠くに行くには不便です。一方、ガソリン車と同じように使うには、莫大な充電設備=充電インフラの整備が必要です。私たちは、どちらを選ぶのか。考えていかなければいけません。

つけ加えますと、ガソリン自動車も、石油掘削施設、石油輸送パイプラインやタンカー、ガソリン精製設備、備蓄タンク、ガソリンスタンド等の膨大な設備の建設と整備があって、初めて普及し、私たちが便利に使えるようになったのです。

なんだか答えになっていませんが、電気自動車との生活をみんなで考えていきましょう。


答えを書いていたら、とても長くなってしまったので、この続きは次回掲載します。
しばらくお待ちください。

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『EV相談室』記事一覧
【第1回】日本でEVがあまり普及しない原因は何?
【第2回】未来の車はEVしかない?