プロローグその1 「おいてけぼりの自動車愛好家」

おいてけぼりの自動車愛好家 text:舘内端

「なんだよ。なんだよ。私に断わりもなく...」というのがフランクフルト・モーターショーを取材した正直な気持ちです。断っておきますが、私はかの国の大統領でも首相でもなく、一介のモータージャーナリストに過ぎませんので、偉そうに言っているわけではありません。

しかし、小学3年生で原動機付き自転車に乗って以来、ずーっと自動車を愛し続けてきたことには自負があります。レーシングカーの設計者として儲かったことは皆無ですが、安い原稿料で稼いだ少しばかりのお金で暮らしながら、すべてをモータースポーツに捧げたことには自信もあります。さらに今は亡き徳大寺さんにはめられたというか、勧められて高価なジャガーXJSを買って、ローンの返済に四苦八苦したことも事実です。でも、短い時間でしたが、ジャガーXJSと共にあった時間は、徳さんの言う通り、私にとってかけがいのない素晴らしい日々でした。

哀しい話もあります。自動車評論家とスカイライン・ファンからボロクソに言われた都市工学スカイライン、セブンス・スカイラインを有り金はたいて購入し、4年間も乗り続けたことです。こけにされたセブンスでしたが、誰かが買ってやらないとスカイラインの伝統が終わってしまうと思ったからです。しかし、まあダメなクルマでしたが...。
さらには、ローンも残っているのにジャガーXJSを売り払って、その上、徳さんと日本EVクラブ副代表の御堀直嗣氏に大金を出していただいて電気のフォーミュラーカー、電友1号を作って米国のEVレースに参戦したのも、自動車に生き残ってほしいからでした。

自動車に尽くしたりないことはよく分かっていますが、自動車を(生活を犠牲にしてまで)とても愛してきたことは認めてほしいのです。そして、EVにシフトするのであれば、私のようにきっと財産のほとんどをつぎ込んで自動車を愛して、何の見返りも得られていないであろう自動車愛好家に一言あっても良かろうに、と思うのです。自動車産業が栄え、存続し、日本でいえば世界に冠たる産業に育ったのは、私のような自動車愛好家がいたからだと思う部分もあると思うのです。

その自動車が、石油を燃やすがゆえに地球温暖化を招き、石油をめぐるきな臭い紛争の火種となり、排ガスで都市の空を灰色にして生命たちを危機に陥れていることは、20数年も前から知っていましたし、内燃機関自動車が存続の危機に立たされていることも重々承知です。EV化が、自動車が存続するための手段であることも分かっています。だから日本EVクラブを設立し、EVの普及を推進してきたのです。

しかし、フランクフルト・モーターショーを見る限り、カーメーカーは、一人、勝手にEVにシフトしてしまうように見えるのです。自動車は確かに、企画し、生産し、販売するあなたたちカーメーカーのものです。ですが、私たち自動車ユーザーがいなければ成り立たないこともまた厳粛な事実なのです。自動車は、私たちのものでもあるのです。
EV化の主目的である地球温暖化は、自動車メーカーの責任であると同時に、国と行政と、先進国に暮らす私たちの責任でもあります。そして、自動車メーカーと国と私たちが力を合わせなければ解決できない人類の課題であります。
とすれば、私たちといっしょにこの困難に立ち向かっていこうと、なぜ声を掛けてくれないのか。EV化を前に、これからどうすれば自動車を愛せるのか、迷い、悩み、途方に暮れる自動車愛好家の存在を忘れないでほしいのです。

以上が、今回の「フランクフルト・モーターショー2017緊急報告会」を主催する日本EVクラブと代表の私の主旋律です。ぜひ、ご参加いただき、これからの自動車と自動車社会をいっしょに考えましょう。
上記報告会の開催までに、あと2度ほどこうしたご参加請願文を書かせていただくつもりです。
フランクフルト・モーターショーは、日本が確実にEVシフトに乗り遅れることを示していました。日本の自動車産業は存亡の危機にあるといって過言ではありません。そのあたりについて、報告会ではしっかりレポートする予定です。次回はこうした点について少し書かせていただきます。

開催概要

日時 2017年9月29日(金)12:30~16:30
参加申込締切 9月25日(月)
場所 日本科学未来館
(東京都江東区青海2-3-6 Tel:03-3570-9151)
参加費 8,000円(当日お支払いください)※日本EVクラブ会員は7,500円
テキストをご用意する予定です(テキスト代は別途必要です。テキスト代は決まり次第お知らせします)
定員 50名(申し込み先着順、定員になり次第締め切ります)
<プログラム>
【1】 フランクフルト・モーターショー報告
【2】 ヨーロッパ、米国、アジア(中国)の動向
【3】 なぜEVへシフトするのか
環境・エネルギー問題と新しい自動車市場の喪失

【4】 今後の自動車動向と私たちの働き方
ベテラン・モータージャーナリストと舘内端の討論

【5】 質疑応答
※講師:日本EVクラブ代表舘内端、JAFメディアワークス鳥塚俊洋氏(元JAF Mate編集長)
※ イベントの内容、スケジュールは予告なく変更になる場合があります。

■参加方法

お申し込みはこちらのフォームからお願いします。
締切後(9/25以降)、参加可否についてメールにてお知らせします。

■主催/申込み/問い合わせ先

日本EVクラブ事務局
TEL:03-5376-8446 FAX:03-5376-5310
info@jevc.gr.jp