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いっぽいっぽ

久慈から宮古への道を急ぎつつ、私の目は常に左右の景色や建物を追い、猟犬のように鼻をくんくんさせている。

今回の旅は、宿を含めてほとんど事前のアポイントなどは取っていない。もっというと、ろくすっぽ、旅で立ち寄る場所を決めるための下調べすらしていない。

台本なしの、電気自動車ロードムービー。

EVスーパーセブンが導いてくれる出会いに忠実に。そこで感じたことを書き留めていこうと思っている。

して。

電気自動車で走っていると、周囲の音や気配、光の色や、においまで敏感に感じ取ることができる。

さらに。

舘内さんと合流して以来、コントローラーをセッティングする「ハンドツール」をぽちぽちやって、アクセルレスポンスなどをちょちょいのちょいで調整していく舘内さんの姿に「さすが、レーシングカーのプロ!」と感動している。が、私とて、もう20年以上、こんな風に各地を旅しながら美味しいネタを探し続けてきたライターとしてのプロ意識がある。

で。

しばしばと、ぶつかってしまうのだ。思いもかけない絵になる出会いや発見に。

山田町を走っていると、右手に、子どもたちが庭で遊ぶ、ウッディな建物が目に入った。屋根の近くの壁には『いっぽいっぽ』というひらがなの文字。

なんだろう? と右折して駐車場に入ると、さっそく、子どもたちが歓声を上げながら、わらわらと舘内さんが運転するEVスーパーセブンに駆け寄ってきた。

舘内さんがMOMOのヘルメットを脱ぐと「かっこいい!」と言いながら、いきなり自分でかぶってピースサインを出した田村新基クン(小学校3年生)。その姿を見ながら「オレはいいや」と、そっぽを向いてテラスでやってた工作教室に戻っていった葵里クンは、新基クンの弟だ。

なんだか「秘密の勉強会」でここに集まっていたというおかあさんたちも集まって、まずは一緒に記念写真を撮影した。

この『いっぽいっぽ・山田』は、OMFという団体が岩手支援プロジェクトの拠点として昨年6月に建設したもので、世界中からの支援で運営しているので、フリースペースとして無料で利用できたり、飲み物を100円で提供して、自由に語り合う場所などとして地元の人たちに活用してもらっているという。

コーディネイターの本間英隆さんに「ここがどんな場所」なのかを訪ねつつ、OMFという団体についての詳細はあえて訪ねなかった。今、ネットで検索してみると、キリスト教系の宗教団体のようだ。

宗旨とか、この支援プロジェクトにどのくらい布教の思惑があるのかといったことは、わからない。

でも、おそらくは被災から立ち上がるために一生懸命に働いている子どもたちのご両親にとって、子どもたちが笑顔で集まる場所があるだけでも、すごく助けになっていることだろう。

考えてみれば、この旅も、EV時代の到来を信じる舘内さんや私たちによる、布教活動のようなもの、ともいえる。

私は無宗教だし、幽霊の存在すら信じていない。

でも、子どもたちの笑顔には、人智を越えた力があることは実感できる。


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