スケートリンクで電気レーシングカートの氷上プレゼンテーション走行を行いました。

日本EVクラブでは、7月13日(土)、地球温暖化を防ぎつつ、アクセル全開で楽しめる持続可能な21世紀の都市型電気四輪氷上スポーツ「SDGs Urban Electric Four-Wheeled Ice Sports」のプレゼンテーションイベントを、新横浜スケートセンターで開催しました。

メディア向けのプレゼンテーションイベントでしたが、どなたでも見学いただけるイベントにしたところ、多くの方々にお集まりいただきました。
プレゼンテーションのレポートと、氷上プレゼンテーション走行をしてくださった、モータージャーナリストのみなさんのコメントをお届けします。

 

プレゼンテーションを終えて
日本EVクラブ 代表 舘内端

クルマを思ったように操れたら楽しい。思ったように操れるクルマがあったら嬉しい。そして、自由に走れる場所があったらもう言うことはない。しかし、日本にはそんな場所は少ない。ましてや都会には無いに等しい。そして、クルマは大きく高価になった。

一方、クルマ離れと聞くが、どうしてどうして話を聞くと楽しく走りたい人はけっこう多い。小学生も、小学生の女の子も、もちろんいい歳の大人も、そしてお年寄りもだ。
そんなモヤモヤを抱えて数十年。だったらせめて子ども達にレーシンクカートに触らせて上げようと「親子Kids電気レーシングカート組立&EV・PHEV試乗会」を開催した。大人気である。

だが、子どもたちも(そして親も)、「乗りたいな」と言う。組み立てさせておいて、つまり乗りたい気にさせて乗せられないのはまずかった。といっても、交通至便、駅近で、商店街もあり、電気とはいえカートが走れる場所などあるわけもなく、数年が過ぎた。

そんな折、ふと浮かんだのがスケート場であった。もしかしてと、一縷の望みを抱いてカート用のスタッドレスタイヤを探しまくり、スパイクを打ってくれるお店を探し、氷上仕様のKids電気カートを仕立てて、スケート場に恐る恐るお願いをしてみた。仔細は省くがご了承いただけた。案ずるより産むがやすしという格言があるが、まさにそれであった。

そこで、埼玉県の上尾市にある「埼玉アイスアリーナ」で「Kids電気レーシングカートアイスリンク試乗&EV試乗会」を開催したところ、子どもたちは大喜びだった。しかし、今度は子どもたちの親とスケートに来た大人たちが、「乗りたい」とのことであった。

と、まあこんな訳で今回の新横浜アイススケート場でのメディア向けのプレゼンテーションになったわけである。子どもも、女性も、熟年も、お年寄りも楽しく乗れる、誰でも「そんなスポーツがあったらいいな」と思う「都市型電気四輪氷上のスポーツ」の提案であった。

ささやかなプレゼンテーションだったが、参加されたメディアの人たちのレポートにもあるように、十分ではないとしてもかなり満足いただけたようである。日本EVクラブのHPを見て、新横浜新聞(ウエッブ)を見て、友人に誘われて知った人たちとその家族で、説明会はごった返した。一安心と同時に少しばかり「やった! 」と思えた。
会場の新横浜スケートセンターは新横浜駅から徒歩5分。駅近である。美味しいものが食べられるお店や、ゆっくりお買い物ができるお店が所狭しと並び、夏だというのに涼しく、試乗しても汗をかかず、着替えも容易なロッカーが揃い、トイレも清潔である。そして、スケートリンクの広さは30m×60mで適度のスピードが楽しめる。

試乗車はいずれも電気のレーシングカートで、Kids用、ジュニアー用、そして2台の大人用を揃えた。動力は電気モーターなのでPCを使って乗る人に合わせた出力調整が容易にできるし、そもそもグリップが弱いので小型のモーターで済む。タイヤは米国製のスタッドレス。さらに特別に製作したスパイクを打った。

また、小さな電池でもスケートリンクであれば1日走っても電気は余る。充電はプラグをコンセントに差し込むだけ。スケートリンクであれば、タイヤも減らず、ブレーキもほとんど減らず、数年間はメンテナンスフリーで維持費はわずか数十円の電気代だけだ。

そしてグリップが低いから簡単な構造の車体で十分で、しかも傷まず、同じ車体で親・子・孫まで使える。大出力を求めてもタイヤがスリップするだけだからモーターもバッテリーも小型で安価なものでよい。いたみも少ないので孫の代まで使える。つまりスケート場では競技車も廉価で、費用も驚くほど安いのである。

今回は往年のレーシングドライバーの津々見友彦さん、高度なドライビングテクニックを持つ壮年のモータージャーナリストの斎藤聡さん、自動車雑誌編集長の若林葉子さん、そして津々見友彦さんのお孫さんで小学5年生の津々見真一君の4人の方にプレゼンテーション・ドライバーをお願いした。小学生、女性、壮年、高齢者というパターンを揃えさせていただいた。


その結果はプレゼンテーションで走られたドライバーのみなさんのレポートをお読みいただければお分かり頂けると思うが、ほぼ狙い通りであった。ただ、リンクの整氷がゆき届きすぎて、少々グリップ不足であった。埼玉アイスアリーナではスケート教室の後に整氷せずに走ったのだが、今回の2倍ほどのグリップであった。スケート場のスタッフの方々は、きっとフィギュアやホッケーの試合でも整氷にはとても気を使っておられるのだろう。これはとても勉強になった。

結果について一つだけご報告しておくと、終了時間も迫ってはいたが少し時間があるので、会場の方で乗りたい人を募ると、一斉に手が上がった。とくに元気が良かったのが女性であった。どうぞと勧めると、「乗っていいんですか。ほんとうに? 」と頬を赤らめて、ヘルメットをかぶるのももどかしく乗り込んで、ぎゅっと前を見つめて走り出した。

その姿がモータースポーツに夢中だった頃の自分に重なった。「男」の私は、しかもレーシングカーの知識もあったから容易にモータースポーツに入り込めたが、きっと女性たちは「走ってもいい」とは思えず、自分たちとは別世界の出来事と思っていたのかもしれないと思い、なんとも申し訳ない気持ちになった。

スポーツは世界のあらゆる人たちのものである。4つのタイヤで走るスポーツも同様だ。子どもも、女性も、熟年も、お年寄りも、そして身障者も、みんな走ってみたいのである。そんな気持ちにこれまでの四輪スポーツが答えて来たかという、関係者の一人として自信はない。

さて、これから都市型電気四輪氷上スポーツをどうしたものか。まずは長たらしい名前を簡潔で分かりやすいものに替えなくてはと思う。また先日のプレゼンテーションに参加された方だけではなく、本レポートをお読みになった方も含めて、たくさんのご意見を頂き、「みんなのスポーツ」として立ち上げていくのが良いのではないかと思う。

ということで、名称を募集しましょう。素敵な名前をご提案ください。そしてご意見をいただけるサイトを日本EVクラブのHPに開設します。

どんなことにも締め切りが必要ですから2020年の2月に、東京オリンピック・パラリンピックの開催を祝して、どこかのスケート場で、何らかの競技会を開催しましょう。東京オリパラも、この新式四輪スポーツも、SDGsを掲げ、CO2削減、地球温暖化防止を目指すイベントなのですから。

プレゼンテーション・ドライバーのみなさんから感想をいただきました。

津々見友彦さん/津々見真一くん

先日、「都市型電気四輪氷上スポーツ」に嬉しいことに10歳の孫と参加させて頂いた。わくわくするイベントだ。まず、ERKそのものが楽しい! そしてもっと楽しいのは氷上で走ること。一般的にドライの舗装路の摩擦係数は0.8前後。氷結路で0.2から0.1だそうだ。
普段の道路より4倍以上も滑りやすい路面で走ることになる。
もっともそれではまともに走れないと面白くないので、スパイクが打ち込まれているので滑りやすさは2、3倍か?
おっと、こんな話は舘内さんが専門だが、とにかくカートで滑りやすいコースを走るのは面白い。

私でさえささやかな興奮を抱えているのに、もっと興奮したのは孫の真一だろう。
なにしろ生まれて初めてのカート体験。しかもスケートリンクで・・・。
とても当日は緊張していたのだが、でも、乗りたい一心で勇気をもってカートに乗り込んだ。
私と言えば、実は一般の野外のカート場よりはズット安心して見ていられた。広場的なリンクにパイロンでコースを規制するだけなので、運転ミスしても周囲のバリアまで距離があり、仮にバリアに衝突するとしてもスピードがいたって遅い。
つまりグリップ力が低いので駆動も弱い。いくらモーター出力が高くてもスピードがあまり出ない仕掛けだ。

とは言え、モーターは停止状態からの初期トルクが高い。だから、孫には「アクセルはそーっと踏むんだぞ!」と、くどく説明しておいた。
彼は大好きなじいちゃん(今だけかも知れないが・・・)のアドバイスを忠実に守り恐る恐るアクセルを踏みスタート。
担当のエンジニアの方々がモーターのレスポンスと出力調整を綿密にやって頂けたお蔭で、アクセルレスポンスは穏やかでコントローラブル。
丁寧に走り出し、コーナーでは「ハンドルを切りながら、もっと曲げたいときにはアクセルをそ~っと踏むんだぞ!」のアドバイスを忠実に守り、コーナーもゆっくりではあるが、スムーズに曲げて走れた!

やはり子供は順応性が高い。一度フルフェースのバイザーが曇り、前が見えなくなって、コースアウトしたものの、バイザーを上げて走り出すと、パイロンをスムーズに通過。2~3周するともうすっかり慣れてしまい180度ターンもパワードリフトまでもこなしてしまった。
後で感想を効くと「最初は乗れるか不安だったけど、言われたとおりに走らせたら思ったより上手く走れた!」とのことだ、そして「スピードを出そうと思ったら速くも走れるし、ゆっくりも走れるので小さい子でも安心だよ!」と、何だか一回しか体験してない割にもはもう、後輩に話すようなゆとりのコメントだった。
実際、私も子供のモータースポーツへの取っ掛かりとしてはともて良いアイテムだと思う。

1)ロケーションが良い。都心近くにありアクセスが簡単。
2)ERKの特徴で、静かで排ガスが出ない。室内で走れる。つまり天候に左右されない
のがいい。
3)観客席も音が静かなので、見ていて疲れない。
4)設定でパワーコントロールが出来るので初心者にも安心。
5)低回転のトルクが高いのでアイスバーンでのハンドリングコントロールがしやすい。
6)タイヤのグリップコントロールの感覚が研ぎ澄まされる。
(これはサーキットでのドライビングにとても重要な要素だ)
7)絶対的な速度が低いので安全性が非常に高い。
8)ステアリング、ブレーキ、アクセルなど各コントロールをするのにタップリと時間
がある。(絶対速度が遅いので初心者でも充分対応できる。)
9)タイヤやマシンの消耗が少ない。
などメリットはたくさんあり、初心者の基礎トレーニングにはピッタリだ。一般的なレーシングサーキットでもなかなか試せないパワーコントロールでコーナリングするドライビングの基礎トレーニングが簡単に出来る。ドリフト走行だ。
低速でドリフト走行が楽しめ、異次元の走りを体験できた。しかも超安全にだ。
孫も次のイベントを楽しみにしている。あっ、実は私も・・・・!
津々見友彦・・・レーシングドライバー/モータージャーナリスト
津々見真一(小学5年生)

斎藤 聡さん

想像以上の面白さでした。EVカートで氷上を走る、という話を聞いて、もの凄く滑って、運転も難しいんじゃないか? と思ったのですが、EVカートはスパイク付きでした。これが適度に滑り適度にクリップしてめちゃめちゃ面白い。普段、車で走っていて滑るなんて体験はまずないと思います。それだけに運転も難しいと思われるかもしれませんが、じつは意外なほど簡単なんです。
モーターは内燃機エンジンと違って、アクセルと駆動力が直結していますから、滑った! と思ってアクセルを戻すと、すぐにタイヤの空転が止まります。それでも慣性力が残っているので、少し車は滑りが残るのですが、スパイクタイヤが氷の路面を引っ掻いているので、抵抗感が感じられ、「これはすぐに止るだろう」というのがちゃんとわかります。だから、慣れてしまうと案外怖くありません。それどころか滑るのが楽しくなってきます。
というのも、ハンドルは1対1なのでクルマのようにグルグルハンドルを回す必要がありませんから、誰でも適切にハンドルが切れるんです。
今回試乗された方ほぼすべての人が例外なく、カートを滑らせて、カウンターステアを当てて、楽しく走っていました。
でも簡単だからつまらないかというと、まったく逆で、コントロールする面白さと深さがあるんです。自分のイメージした走りを正確に行うことができるように、ひたすら走り込みたくなってしまうんです。これってモータースポーツそのものなんですよね。
敷居は低いけれど奥行きが広い。そんな魅力が、この都市型電気四輪氷上スポーツにはあると思います。
しかもEVですから排気ガスは出ないし、音はモーター音とスパイクタイヤがカリカリと路面を引っ掻く音だけ。静かでクリーンなので屋内で楽しむことができるわけです。
ついでに言うと、体にかかる負担がとても少ないので、お子さんからお爺ちゃん、おばあちゃんまで、同じルールで楽しめるというのも大きな魅力だと思います。
いまアイススケートはなかなかなブームですが、アイススケートセンターに、アイススケートをしに行くような軽いノリで、EVカートでモータースポーツする。そんな楽しみ方があってもいいのではないでしょうか。
斎藤聡・・・モータージャーナリスト

 

 

 

 

若林 葉子さん

初めてのERK。理屈抜きにとっても楽しかったです。
身近に切っ掛けさえあれば、女性だってモータースポーツに興味を持つし、自分でやってみたいと思う可能性は大いにあると思うのですが、モータースポーツはこの「身近」というところが実は難しい。たいていのサーキットは遠いですし、夏は日陰が少なく、冬は吹きっさらし。最近はずいぶん変わりましたが、トイレ事情も決して良いと言えないところも多いですよね。その点、スケートリンクは街中にあって、屋内なら天候の影響を受けにくく、電車で気軽に行くこともできます。
氷上ERKを体験して最初に思ったのは、汗だらだらにならなくて済むんだってことでした。スケートリンクなのでじっとしていると底冷えしますが、運動するにはちょうど良いんですね。熱中症の心配なし、お化粧がハゲる心配なし(笑)。
でも、ERKが”ゆるい”モータースポーツかというとそんなことはない。ちゃんとコントロールしようと必死でした。ちょっと気をぬくとクルリンとすぐスピンしてしまう。感覚を研ぎ澄ませてクルマ(タイヤ)の動きを掴もうとしますし、アクセル(右足)とブレーキ(左足)の繊細な操作も必要。高い集中力が養われる、とそんなふうに思いました。
排ガスが出ないことはもちろんですが、音や振動による恐怖感もないので、女性や子ども、高齢の方にもとっつきやすいのではないでしょうか。低いスピードでも十分にスポーツできて、楽しめる。いろんな意味で将来への可能性を感じました。
若林葉子・・・「ahead」編集長

 

 

 

来場いただいた関係者のみなさんにも試乗いただきました。

鳥塚俊洋さん

最初は “そりゃないだろ” と思った。なにしろ、釘(スパイク)を打ったタイヤで、スケートリンクをガリガリ走り回ろうというのだから。でも今の整氷車は、そんな傷くらいものともせず直せるようで、あっさりとOKが出たという。
ということで、日本EVクラブが実現した「SDGs Urban Electric Four-Wheeled Ice Sports」のプレゼンテーション・イベントに伺い、試乗させてもらった。要はアイスカート。EVカートなので、静かで、振動が少なくて、臭くない。そして遅い(初心者でも怖くないスピードに調整されている)。スパイクタイヤとはいえ、簡単に滑るからスピードが出せないのである。
でも、この遅いのが楽しい。遅くて楽しいモータースポーツっていうのは、世界初かもしれない。峠で命をかけなくても、お尻がすーっと横滑り(ドリフト)する気持ちよさを、こんなに簡単に、長く、安全に楽しめるというのは大発明だと思う。
ちなみにおじさん達は、かつてのスリックカートを思い出すかもしれない。昔の経験なので曖昧だが、スリックカートは滑り出したら最後、ぶつかるまで止めるのが難しかった記憶がある。それに比べて氷上カートはカウンターが気持ちよくあたるので、素人でもドリフトしながらくるくる回れる。一度乗ったら、絶対、また乗りたくなる。というか、絶対乗りたい。
もう一つ思ったのは、運転好きの高齢者の趣味にも最高じゃないかということ。なにしろスピード出ないし、ペダルを踏み間違えても滑るだけなので安心。それでいて腕の差が歴然とでる。氷上カートで規定タイムが出なくなったら免許返納とか、本当にいいかもしれない。

参考資料

プレゼンテーション資料(PDF)