EUでは2050年の燃費規制は、リッター116キロメートル以上となる。これは企業平均だから、それでも高級エンジン車を売るのであれば、膨大なゼロエミッション車=EVを販売しなければならない。

という話からVWの電気ゴルフミーティングは始まった。5月30日、場所はお台場の国際交流会館であった。

ということで、2050年という近くて遠い将来の自動車は、どう考えてもエンジン車は不可能である。

えっ、だってマツダはディーゼルに命をかけるんでしょ。 大丈夫なの?

マツダのようにエンジンに生き残りをかける自動車メーカーもある。しばらくは、エンジンやらトランスミッションやら、車体の省エネ化が大変に重要なので、スカイアクティブの需要はある。2020~2025年まではエンジン車の天下だ。

ただし、2020年を超えると何らかの電化した自動車も販売する必要がある。

ちなみにEUのCO2排出量規制は、今年から120g/km(リッター19.3km)となり、これが2020年には90g/km(リッター25.8km)となり(EUモードではプリウスが89g/km)、さらに2025年には70g/km(リッター33.1km)という案が出されている。

EUモードは日本のJC08よりも厳しいので、たとえば2020年規制のリッター25.8kmは、JC08ではおよそリッター30kmとなる。大変に厳しい規制である。

そうなると2020年には、みんなプリウスにするか、エンジン車であればダイハツ・ミラ・イースあるいはスズキ・アルト・エコにしなければならず、とてもファン・ツー・ドライブなどと寝言はいっていられず、みんな鈍なクルマでがまんするしかない。

いや、いや。ここは日本だから、そんなに厳しくならないだろうと思われるかもしれないが、それはない。日本だけゆるくしていれば、世界中から激しく非難されるだろう。また、米国も中国も同様である。

そういえば、1978年頃にもそんな鈍な自動車だらけとなった。この年に世界一厳しい排ガス規制が実施されたのだが、三元触媒と電子燃料噴射装置が完成するまでは、ちょっとした坂もよちよちとしか走らない自動車だらけであった。

それでもCO2排出量を削減しなければならない訳は....というところで、VWの電気駆動担当グループ執行役員のDr.ルドルフ・クレープス氏のプレゼンテーションをご紹介しよう。

こうしたプレゼンテーションは、メディア対象であって、一般の方々を対象に行われることはあまり多くない。それで自動車メーカーの考え方がいまひとつ一般の方々に伝わっていないのではないかと思う。

だからといって、雑誌や新聞にすべてを紹介するスペースもない。ここは、ページに限界のない電子メディアの登場である。

今回は、だいぶ退屈なブログになりそうだ。しかも長くなりそうである。それでもがんばって面白おかしくするので、がまんしてほしい。

「フォルクスワーゲングループのEモビリティ戦略」と名づけられたプレゼンテーションは、「なぜエレクトリックモビリティなのか」で始まった。

その理由として

・気候変動―CO2排出

・大都市におけるスモッグと騒音

・有限な化石燃料

の3つを上げた。

あたりまえといえば、とてもあたりまえである。しかし、少なくとも20年前に、この3つが自動車に立ちはだかる大問題だと公表したメーカーはない。

また、こうしたことを公表した自動車評論家=私は、ひどい目にあった。友人を失い、仲間外れになり、仕事は激減し、中には目の前で「向こうに行った舘内さんとは話をしたくない」といって、去って行った自動車メーカー関係者もいたほどである。

それはともかくとして、この3つのうち、とくに気候変動と化石エネルギーの有限性を認めない自動車メーカーがまだある。とても不思議だ。

もっとも認めた途端、「なぜEVやHEVを販売しないのだ」と問い詰められるので、公言できないのだろうか。

えっ、そんな自動車メーカーはどこだってか? ウーン、大きい声ではいえないが、MDSFとでもいっておこうか。そんな自動車メーカーの社長さん、そろそろ年貢の納め時ですよ。

ということで、プレゼンテーションの最初にこの3つの問題の存在を認めたVWは立派だと思う。全社的にこれを認めるところから始めないと、エンジン原理主義派やらそのOBやらをコントロールできず、電気駆動車の開発がスムーズに進まない。

2枚目のパワーポイントは、「気温上昇の抑制とCO2排出量規制」である。

VWは、「通常の駆動技術だけでは2050年までに地球の気温上昇を2度C以内に抑えることは困難。達成には電気駆動技術が必要になる」という。

IPCCがいうには、産業化以前の世界の平均気温にくらべて2度C以上上昇すると、温暖化を止められなくなって、温暖化がさらなる温暖化の原因になってしまうという。温暖化の悪循環の始まりである。それでプラス2度Cを“ポイント・オブ・ノーリターン”と呼ぶ。

2度C以下に気温上昇を抑えるには、先進国のCO2排出量を2050年までに90%削減する必要がある。

ということで冒頭に戻るのだが、2050年の自動車のCO2排出量の目標はキロメートル当たり20gなのである。

これを日本流の燃費に換算すればリッター116キロメートルとなり、JC08ではおそらくリッター140キロメートルほどになるだろう。これでは、いかにエンジン原理主義者ががんばろうと不可能である。

マツダのようにエンジンでガンバルという自動車メーカーはある。プレゼンテーターのVWもダウンサイジング+ターボでがんばっている。

そうなのだが、いつまでもエンジンだけでは持ちこたえられない。ここを勘違いしないようにしたい。だから「電気駆動技術が必要になる」とVWはいうのだが、とても論理明快ではないだろうか。

そういうからにはVWには覚悟と自信があるのだと思うのだが、日本の自動車メーカーもぐたぐだいってないで、このへんで明確に宣言しないと世界の笑われ者になる。

自動車が抱える問題は、上記のように気候変動だけではなく、化石燃料の有限性もある。VWは電気駆動技術の開発と同時に化石燃料に替わる代替燃料の開発、使用も重要だという。燃料の多様化である。

石油代替燃料としては、化石燃料では天然ガスと石炭がある。さて、これをどう使うかだ。

ひとつは、天然ガスはそのままあるいは液化して、石炭は液化してエンジンで燃やす方法だ。

もうひとつは、いずれもそのまま火力発電所で燃やし、その電気で電気自動車を走らせる方法である。

最近の研究では、エンジンで燃やすより発電で使って電気自動車を走らせた方が、効率は5倍ほど良い。つまりCO2排出量は5分の1になるといっている。

化石燃料代替には、バイオ燃料と太陽光・熱、風力、水力、地熱などの自然エネルギーがある。

しばらくは石油と天然ガス、液化石炭などでつないで、将来は自然エネルギー中心で賄うというのが、VWのロードマップである。

ここで閑話休題。

6月20日に、ホンダの環境政策に関する記者発表会があった。内容については機会を見てご紹介しようと思う。ここでは、社長との質疑応答のひとつを紹介したい。

記者の一人が、「最近、シェールガスが注目されているが、どう思うか」という質問をした。

これに対して伊東孝紳社長は、「シェールガスが掘削できるのは、自然エネルギーに移行するまでのつなぎに余裕が生まれるから嬉しいが、それでも化石燃料には限りがあり、使えばCO2が排出されるので問題が解決できるわけではない」と答えた。

私の注釈を加えれば、最近注目されているシェールガスあるいはオイルシェールやオイルサンドと呼ばれる非在来型の天然ガスや石油が、従来型の石油の完全な代替になるわけではない。

このブログでも触れたが、このまま自動車保有台数が増大すると、2020年には世界最大の石油供給国であるサウジアラビアがあと2国必要になる。しかし、上記のエネルギーではそれを賄うことはできない。将来のゼロエミッション社会に移行するまでの余裕は生まれるが、だからといって問題が解決できるわけではない。

VWに話を戻すと、3枚目は「世界的な傾向―ゼロエミッション」として、日米欧+中国で強まる自動車のCO2排出量規制が説明された。

詳しくは触れないが、中国も米国も規制が強まるので、国産メーカーが、規制が厳しいEU進出をやめて米国や中国にいこうというわけにはいかない。

一方、国産メーカーはほぼヨーロッパで敗北である。残るレクサス、日産インフィニティの拡販も、決して容易ではない。しかし、トヨタと日産、ホンダには米国のマーケットがある。苦しいのはマツダだ。ヨーロッパに24万台ほどあるシェアも、これからは国内生産が多いので円高とCO2排出量規制に悩まされることになる。ヨーロッパにとどまりたいのであれば、ヨーロッパで生産することと、ハイブリッド車なりEVなりの電動化が絶対に必要だ。それが無理だからといって、では米国市場に進出となっても、海外の生産拠点も多くなく、米国マーケットには地歩を占められないでいる。

4枚め、5枚めを飛ばして6枚めである。VWの駆動システムの電動化のロードマップの説明である。

順次説明すると、マイクロハイブリッド/マイルドハイブリッド/フルハイブリッド/プラグインハイブリッド/レンジエクステンダー/バッテリーエレクトリック=EV/燃料電池車となる。

レンジエクステンダーというのは、いわゆるEVにエンジン+発電機を取り付けて航続距離を伸ばすものである。そして、ここまではエンジンのお世話になる。

VWの描くそれ以降の未来の駆動装置は、EVとFCEV(燃料電池車)だ。

その2につづく

文:舘内端