電気だけで往復200kmドライブ、で改めて感じたこと。

寄本好則(ジャーナリスト)

天気予報が大雪&厳寒情報を叫んでいた1月の日曜日。関東地方には雪は散らつきさえもせず、EVクラブの仲間である奥田氏、福田氏とともに、茨城県のゴルフ場で「第3回奥田会」(コンペじゃないけど)を開催することになりました。

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12月のドライブ日記【レンジエクステンダーは必要なのか? 使いながら考えてみた】は、第2回奥田会での出来事でした。前回は自宅からゴルフ場までの距離が80km程度でしたが、今回はおよそ100kmです。もちろん、私は今回も「レンジエクステンダーは使用せずに往復する」をミッションとして掲げました。

この時期、暖房を使い高速道路を走ると、i3 の一充電後続可能距離は100kmに届かない程度になってしまいます。約9リットルのガソリンによるレンジエクステンダーで走れる距離の表示も100〜130km程度。ゴルフ場までの距離が約100kmなので、無充電無給油であればぎりぎり往復走り切れるかな、という感じです。

レンジエクステンダーを使わずに電池だけで走るためには、少なくとも1回の満充電、すなわち、2回の急速充電を行う必要があります。同乗者がいる時に急速充電で停まるのは気を使ってしまうものですが、今回の同乗者はEVクラブ仲間の奥田さん。快く「よし、電池だけで走りきろう!」と同意してくれて、早朝の世田谷を出発したのでした。

結局、往路、復路で各1回。2回の充電をしました。

朝の守谷SA下り線。

朝の守谷SA下り線。

【1回目】往路:常磐道守谷SA下り線(10分間)
【2回目】復路:常磐道千代田PA上り線(25分間)

奥田さんを送り、私が自宅に帰着した時には残り走行可能距離が8kmと表示されていました。残距離が5km程度になると自動的にレンジエクステンダーが起動してしまうようなので最後は少しヒヤヒヤしましたが、無事に「電池だけでゴルフ往復!」のミッションを達成できたのです。

めでたし、めでたし。

やはり、エンジン音を聞かずに走りきるのは気持ちいいものです。ということで、今回のミッション成功で、改めて感じたことを、いくつか整理しておきましょう。

EVでのドライブプランは「余裕」が大切

すでにEVを活用している方にとっては「当然」過ぎることですが、ガソリン補給よりも時間がかかる急速充電が必要なEVである程度の距離を走るには、時間の余裕を見込んでおくことが必要です。

早朝、ゴルフに向かう時、普通であれば時間はギリギリで充電なんかやってる場合じゃない、となりがちですが、今回はあえて30分ほど余裕をもってスタートしたので、守谷SAで10分間の充電&スモーキングタイムを取ることができました。

ちなみに、守谷SAもそうでしたが、サービスエリアの喫煙スペースは、比較的急速充電器の近くにあることが多いのは、スモーカー(今回同乗した3人は全員スモーカーでした)にとってはありがたいことです。

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レンジエクステンダーは、あくまでも「予備電力」感覚

i3 のレンジエクステンダーモデルは、約9リットルのガソリンで650ccのバイク用エンジンを回して発電します。燃料は9リットルしか入らないので、冒頭に書いたようにレンジエクステンダーで伸びる走行可能距離は100〜150kmほど(条件や走行状態で大きく変わる)です。

アウトランダーなどの「PHEV」が「電池を多めに積んでEV走行もできるハイブリッド車(アウトランダーの走り心地はあくまでもEV感覚が大切にされていますけど)」であるのに対して、i3 のレンジエクステンダーは、ガソリン9リットル分の「予備電力」を備えたEV、と考えることができます。

アウトランダーPHEVに比べてガソリン分を含めた後続可能距離は短いですが、電池切れで止まってしまう心配をしなくていいのは、とても心強く感じます。

EV活用には、作戦を立てる知恵や経験が大切

現状の市販EVで、ある程度ロングドライブをする際は充電計画が不可欠です。500kmの後続可能距離を誇るテスラモデルSの場合、片道100kmくらいは不安なく走り切れますが、最近追加されたリーフの30kWhモデルでも、高速道路中心の往復200kmを無充電で走りきるのはさすがにきつい。どこで、どのくらい充電するか。あらかじめ急速充電器の場所を調べておいたり、走りながら状況判断して急速充電しなければいけません。

エンジン車ならほとんど考える必要のなかった小刻みな「作戦」が不可欠という意味で、EVは「知的な乗り物」だと感じます。

頻繁に充電しなきゃいけないのも、慣れてしまえば普通のこと。それがEVという乗り物なんだと考えられるようになりますが、EVをよく知らなくて「そんなの面倒だな」と感じる人もいるでしょう。実際、EVについていろんな人と話していると、なかには「そんな不便なクルマ、オレはいらない」「まだ買えないな」と吐き捨てる人が少なくありません。

そういう人に出会ったら、私は「あ、そうですか。じゃ、まだ買わないほうがいいですよ」と答えるようにしています。EVにはエンジン車にない魅力が満載で、ここ数年で充電インフラも整って、私自身としてはEVを「もう普通に使えるクルマ」と思っています。でも「今までのエンジン車と同じように使えない=不便」という固定観念から抜け出せない人がうっかりEVを買ってしまったら、さまざまな不満を抱え、ディーラーにクレームを連発するようなことになりかねません。それは、お互い不幸です。

EVを所有するには、EVの魅力を知り、その使いこなし方を自ら考え、「気候変動を緩和するために自分には何ができるのか」ってあたりまで想像して思考する知性が大事、といってもいいでしょう。

EV社会。さて、これからどうなることか。

今回のドライブでは、2回の充電場所ともに、ほかのEVやPHEVとは遭遇しませんでした。ま、現状の充電場所では、たいがいこんな感じです。急速充電器で「10分以上も待つ」あるいは「待たせる」ような状態でほかのクルマと鉢合わせするのは、正月やお盆を除けば、10〜20回に1回くらいあるかもな、という程度なのが実感です。

でも、今後ますます市販EVの車種が増えていきます。気候変動緩和に貢献するにはEVがもっと大々的に普及しなければいけなくて、そうなると、急速充電器での行列は頻発するようになるはずです。今まで、EVで日本一周したり、東京ー大阪を何度も往復した経験からも、急速充電器活用を含めて、EVを快適に使いこなすには、ユーザー自身の工夫や心配りが不可欠だと感じています。

これから急速充電できるクルマが増えるにつれて、充電待ちと充電器増設のいたちごっこが続いていくことになるでしょう。自動車メーカーやインフラを整備してくれている事業者に「正解」を求めるだけでなく、ユーザー自身が快適な充電インフラの使い方を考えるべきではないでしょうか。どうすれば、理想的なEV社会をつくっていけるのか。EVに興味をもち、EVを愛するみんなで一緒に考えたいよね、と思います。

「何を考えればいいの?」って人は、ぜひ一度、日本EVクラブが主催している『EV入門塾』(最新 EV・PHEV 試乗&セミナー)に参加してみてくださいまし。

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