【コラム】電気自動車とエネルギー

日本EVクラブ代表の舘内端が発行するメールマガジン『電気自動車で世界を救え!』(メルマガ配信サービス『フーミー』より発行中)。創刊から約半年が過ぎ、すでに多くの方にお読みいただいている。このメルマガは、日本EVクラブと舘内端が1994年のクラブ発足以来蓄積してきた経験とノウハウを鑑みつつ、近未来のEVビジネスの可能性を探る連載コラムが中心の構成となっている。

また、東日本大震災と福島の原発事故から復興を遂げていくために重要なエネルギーについて理解と考察を深めるためにも、電気自動車(EV)は大きな鍵を握っている。次世代のEVビジネスを考えるとき、新しいエネルギーのあり方との関係を避けて通ることはできない。もちろん、メルマガの中でもエネルギー事情への理解と考察は重要なテーマのひとつである。

ここでは、メルマガでも配信された舘内端代表の一文を紹介する。EVとエネルギーの関係を見つめ直せば、なぜ「EVは世界を救う」のか、その端緒をご理解いただけるはずである。


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石油の呪縛

最初に、自動車のエネルギー消費と金の関係を理解しよう。日本の場合、2009年に使ったガソリンと軽油の代金は約15兆円であった (エネルギー・経済統計要覧による)。もし、自動車が石油を使わなければ、この金を福祉や年金や子供たちのために使える。日本はとても幸せな国になれるのではないだろうか。

石油は世界の紛争のタネでもある。日本が石油をまったく使わなくなれば、中東の政情への不安から解放され、米国との関係を中心とした安全保障の状況も根本から変わるだろう。まして、米国が脱石油に成功すれば、世界は平和になる。「他国によって米国のエネルギー安全保障が脅かされた場合には軍事展開もありうる」としたカーター・ドクトリン遂行の必要もなくなるかもしれないからだ。

アメリカの燃費規制は、脱石油の世界実現に向けた第一歩かもしれない。「米国は燃費規制を強めて2017年から2025年の間に、現在の12km/l から、その2.5倍の23.2km/l に高める」。この燃費規制によって、米国では一日に220万バレルの石油が節約できるという。1バレル100ドルで計算して、1日に2億2000万ドル、日本円にすると約172億円、年間では6兆2780億円の節約となる。17年から25年には1バレル200ドルは越しているだろうから、実際にはこの金額の2倍以上の節約になるだろう。

では、いつまでも石油はあるのか。どうやら非常に近い将来、人類は石油を使えなくなるらしい。その根拠とされるのが、ピーク・オイル説である。これは、米国のM・キング・ハバードがシェル社の研究所に勤めていた1956年に、「71年に米国の石油生産はピークを迎える」と予測し、見事に的中させたことによる。最近は、このピーク・オイル説を支持する人たちが増えている。そして、現在が石油生産のピークらしいのである。

脱石油に成功しなければ、私たちは今までのようにぜいたくに自動車を使えなくなる。これが、世界の自動車メーカーを自動車の脱石油化に向かわせている第一の要因である。第二の要因は地球温暖化だ。この2つの要因によって世界で電気自動車化が急速に進んでいる。

石油は、中東(OPEC)とメジャーズの実質的支配下にある。私たちは彼らに殺生与奪の権を握られて、彼らから自由ではない。石油の獲得のためには、戦争も覚悟しなければならない。しかし、自動車が電気自動車になり、〝石油〟という、ある意味大変に危険なエネルギーのくびきから自由になれれば、世界に革命が起こるだろう。

電気自動車の効率

では、電気自動車はどれほどのエネルギーを使うのだろうか。日本EVクラブが2009年に行った「東京〜大阪途中無充電の旅」(手作りで改造したミラEVによるチャレンジ)の場合、1kmを走るのに使った電力量は115Wh/km であった。また、量産電気自動車である三菱i-MiEVや日産リーフも、ほぼ同じ値である。電気自動車は心配するほど電気を使わない。エネルギー効率が大変に高い乗り物である。JHFCという燃料電池車の調査・研究を行う機関の調査によると、電気自動車はガソリン自動車にくらべて、自動車単体で効率が5倍ほど高い。エネルギーの掘削や発電まで含めると3倍である。

つまり、日本の自動車をすべて電気自動車にシフトすれば(石油で発電するとして)、石油代金は15兆円の3分の1の5兆円に圧縮できるというわけだ。米国では10兆円ほどになる。たとえば、一晩に電気自動車の充電で使う電気代は、30km走った人で30〜60円である。その結果、電気自動車にシフトすれば、日本では15兆円、米国では32兆円もの自動車の石油代をおよそ3分の1に圧縮できる。

日本の自動車がすべて電気自動車になっても、充電するのに必要な電力は、発電設備能力のおよそ6%である。発電設備能力は、平均消費電力量の約2倍あるので、消費電力量に占める割合は12%だ。日本の自動車すべてが電気自動車になった場合、消費電力が12%増えるということである。

充電の電気代についても考えてみよう。これは、昼間電力契約であれば、1km走るのにおよそ2円、夜間電力契約であれば1円という計算になる。日本の平均的な自動車オーナーの月平均走行距離は500kmほどだから、1カ月の充電電気代は夜間電力で500円だ。東京から大阪まで京都を経由していくと約600kmなので、600円。電気自動車に4人で乗っていくと、電気代は1人150円ということになる。

これがガソリン車の場合、燃費を12km/l 、レギュラーのガソリン代を150円/l とすると、東京から大阪まで燃料代は7500円である。電気自動車は、ガソリン車のおよそ13分の1のエネルギー代しかかからない。つまり、トラックが電気自動車になると、物流のエネルギー代が13分の1になる。大手の物流会社のトラックの燃料代は年間で2億円ほどである。これが1500万円に減ると分かったとき、物流革命が起こるはずだ。

電気自動車とスマートグリッド

また、電気自動車はスマートグリッドと大変に相性が良い。東京都の自家用乗用車の保有台数は、およそ310台である。ほとんどの自家用乗用車は1日に1時間から多くて2時間走るだけである。したがって駐車中に電力を引き出すことは可能だ。今夏の東京電力管内の電力不足は、ピーク時で850万KWといわれた。これを日産のリーフに貯められた電力量で3時間にわたって賄うには、213万台必要である。ただし、電気を引き出されたリーフにはまだ半分の電気が残っているとする。213万台という台数は、電力不足を補うのに非現実的な数字ではない。

さらに、電気自動車が役目を終えて廃車になっても、電池の性能はまだ80%残っている。この廃電池を各家庭に置くと、災害時におよそ2日間、節電すれば3〜4日間の電力を賄える。このように電気自動車をスマートグリッドで電力会社の送電網に組み込むと、電力の平準化が図れ、危機対応能力が高まる。場合によっては、発電所の数を減らすことも可能だ。

しかし、これだけでは二十世紀的エネルギー支配の構造からすべて抜け出しているわけではない。家のソーラーパネルで電気自動車を充電するとどうだろう。そして、そこに貯めた電気を引き出せば、夜間や雨の日でも、自前の電気で生活できる。これは系統電力網からの解放を意味している。つまり、理屈としては電力会社の電線を切ることができる。

私たちは、自然エネルギーをうまく使えば、電力会社とも、それを管理する政府=国家とも、原発とも、節電や計画停電とも、お別れできるのだ。つまり、電気自動車は一種の蓄電装置でもあるわけだから、不安定な自然エネルギーともうまく付き合うための力になる。それは、二十世紀型のエネルギー中央集権の呪縛から解放を意味している。

近代以降の世界はエネルギーをめぐって血なまぐさい紛争を繰り返してきた。先の脱石油化も含めると、電気自動車は私たちを旧世界から解放してくれる可能性を秘めているのである。電気自動車を活用した脱石油、脱原発に成功したとき、日本は世界に誇りうる国家になれるのではないだろうか。

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